ディレクターに必要なスキルをPMBOKの知識体系になぞらえて紹介していきます。
・ディレクターとは
ディレクションとは制作全体の指揮をとることを指し、ディレクターとはこれを実行する人のことを指します。
web業界では、ディレクターといえばweb制作における制作の指揮をとる人のことを指します。
そんなディレクターですが、この業界では非常に役割が曖昧なポジションです。
サイト分析、スケジュール/アサイン計画、仕様書作成、時にはプログラムを書くなど、巷では何でも屋と言われるほどです。
ただし、そんなweb業界のディレクターですが、間違いなく重要だと言えるスキルがあります。
それはプロジェクトマネジメントのスキルです。
これから、ITサービスを作ろうとしている方やweb業界のディレクターの方は是非一読ください。
私が10年業界で培った?失敗経験も交えて紹介します。是非私のような失敗をしないようにしてもらえればと。
・なぜプロジェクトマネジメントのスキルが重要か?
簡単なホームページやLP(ランディングページ)であれば、プロジェクトマネジメントスキルはさほど重要ではありません。
ただし、開発期間が数ヶ月〜1年以上に及ぶプロジェクト(金額にすると500万以上の開発プロジェクト)になると、しっかりとしたプロジェクトのマネジメントが必要になります。
正しいプロジェクトのマネジメントができないと、開発コストが嵩み開発費だけで大幅な赤字になることや、当初考えていた企画からは大幅に外れた期待はずれのものができてしまう、ということに陥ってしまいます。
・PMBOKで考える
PMBOKとはプロジェクトマネジメントを体系的に定義した概念です。
5つのプロセス群と10個の知識エリアで分類されています。
・プロセス群
- 立上げプロセス群 (Initiating Process Group)
計画プロセス群 (Planning Process Group)
実行プロセス群 (Executing Process Group)
監視・コントロール・プロセス群 (Monitoring & Controlling Process Group)
終結プロセス群 (Closing Process Group)
・知識エリア
- 統合マネジメント
スコープマネジメント
タイムマネジメント
コストマネジメント
品質マネジメント
人的資源マネジメント
コミュニケーションマネジメント
リスクマネジメント
調達マネジメント
ステークホルダーマネジメント
初めてPMBOKを学んだ時は単なる知識で、現場では活かせないと考えていましたが、
多くの経験をしていくと、その知識体系が本質的なポイントを捉えていて非常に重要性を感じました。
失敗事例を交えてその重要性を紹介していきます。
【曖昧さを排除。スコープマネジメントの重要性】
まずは失敗プロジェクトの紹介から。
・プロジェクト概要
クライアント :大手エンターテイメント会社
案件内概要 :ゲームスコアの管理プラットフォーム構築プロジェクト
開発費用/期間 :500万/4ヶ月
■何が起きた?
開発の発注依頼をもらい、中途採用したディレクターにプロジェクトのマネジメントを担当させた。
年齢、経験から信頼して任せており、報告からも問題ないと判断していた。
しかし、、、当初の予定期日に納品した翌日、「できたものが要求と全然違う!!!」とクレームが発生。
状況をヒアリングすると
・ppt3枚の資料のみで仕様のすり合わせ
・コアとなるシステムの管理方法を曖昧に定義し、開発
クレーム発生後、担当ディレクターを変え再度要件を一から見直し、連日深夜対応で2か月遅れ納品。
急いで作ったため曖昧な定義の部分の調整で、さらに3ヶ月間の瑕疵対応に追われた。。
■結果として、、、
・数百万の赤字(納期遅延による稼働超過)
・顧客との関係悪化、損失
・時間が取れず他のプロジェクトにも影響が出る悪循環
非常に辛いヘビーなプロジェクトでした。
このプロジェクト、何が悪かったと思いますか?
問題だったポイントは主に3つあります。
■問題だったこと
1.仕様書が不十分
→PPT3枚で仕様を擦り合わせる、ということは非常に困難です。
規模が大きくなればなるほど、認識のズレが多発します。
2.顧客とのコンセンサス不足
→開発していく過程で、定期的な状況報告、認識擦り合わせをしておらず、決議事項の記録もなかったです。
3.要件外の時の交渉
→開発中に追加で依頼されていた機能を、費用やスケジュールへの影響を理解せずに、受入れて開発をしていました。
→→結論:『スコープが曖昧だった』
■スコープマネジメントとは
「プロジェクトの目標である最終成果物を作成するために必要な作業が過不足なく確実に遂行されることを保証すること」
・PMBOKでのスコープマネジメントのプロセス
スコープ計画:必要な成果物を定義
スコープ定義:成果物を遂行するためのタスクを定義(WBSなど)
スコープ検収:成果物の検証(検収)
スコープ変更管理:成果物とタスクの見直し(変更)
・webディレクションに置けるスコープマネジメントの肝
①可能な限り抜け漏れない資料(仕様書)を作成すること
画面、API、DB、バッチなどの仕様書の作成など、必要な仕様書を可能な限り正確に作成することが重要です。
②顧客とのコンセンサス
web業界はスピード感や顧客の特性上、十分な要件定義の時間を取ることが難しいことが多いです。
そのため、開発していく過程でも常に顧客とのコミュニケーションを取ることが重要です。
・定期的なMTGを実施すること
・決議事項は必ず記録すること
③初期要件外の要望時のタスク見直し
開発を始めた後でも仕様を変更したいことは日常茶飯事。
開発フェーズに入ると変更要望は全て対応しなければいいのでは?という疑問もあると思いますが、
出来上がるサービスの品質向上や顧客との信頼関係の構築のためには仕様変更の検討は必要なことです。
そのため、仕様変更する時にはそれによるプロジェクト全体のスケジュールやコストの確認、トレードオフの検討をする必要があります。
・まとめ
以上、スコープマネジメントの重要性でした。
スコープをしっかり定義し、納品後に「思ってたのと違う。」とならないようにしていきましょう。
参考になりましたでしょうか?
次回はタイムマネジメントの重要性です。
ディレクターに必要なスキルをpmbokから学ぶ【第2回】タイムマネジメント
ではまた。